ミサミサ先生インタビュー こどもアトリエニョッキの使い方3
先生、年長クラスになりました!

 

*こどもアトリエニョッキの使い方・特別編 「お子さまを送り出す前に」

 はブログページに掲載しています。(2017年10月1日 発信)

 

多くの幼児教室では、今秋にお試験を控える受験生対象のクラスがスタートしてから数ヵ月が経ち、春からはいよいよ本格的な年長クラスが始まろうとしている時期ではないでしょうか? 年中クラスまでの勉強と体操に加えて、行動観察、絵画、制作…と教科も増え、さらに週末には模擬テストの予定も加わり、プレッシャーを感じているお母さまもいらっしゃるのではないかと思います。

 

今回は、年長クラスのお母さまへ、お子さまとどう過ごすのか、志望校はどのように絞り込んでいくのか、ミサミサ先生にお話を伺っています。

  

3 POINTS

● 絵画制作を伸ばすには、人生経験が重要

● 持って生まれたものはある!(志望校の絞り方)

● 模擬テストに一喜一憂しない

 

 

●  絵画制作を伸ばすには、人生経験が重要

 

小学校受験というと、ペーパー、運動、行動観察。それにお絵描きや工作も大切な科目ですよね。どうやって絵を描かせるか、どうすれば上達するのか。悩んでいるお母さまも多いと聞きます。

 

年長クラスになって急に思ったことを絵に描けって言われても、いったいどれから描けばいいの?と思いますよね。人は描けない、動物も描けない、木も描けないっていう状態で、何から練習していけばいいのだろう・・・と思うと焦りますよね。

 

 ー 年長からの半年程度の時間で全ての科目を伸ばすのは大変ではないですか? 絵や工作は、いつ頃から受験に備えて取り組めばよいのでしょう?

 

都内(の幼児教室)の中には、お受験の準備を始める最初の段階、年少クラスから絵画に取り組むというお教室もあるそうす。

ペーパーはある程度いろんな知識が増えてきた年長クラスにならないと解けない、わからない問題はありますけど、絵や工作は2,3才くらいからでも、取り組むことができるんですよね。

 

  では現在お子さまが年長クラスに既に通っていて、基本的には描いたり作ったりはできるんでしょうけど「それでも絵や工作をもう少し何とかしたい!」と思っておられるお母さまは、今から何を取り組めばよいのでしょうか?

 

 「絵画制作において個人差がどこで出るのかと言えば、実はテクニックよりも、豊富な経験なんですよ。(本番までの)残された時間にご家庭で何を準備すればいいかを考えたときに、さまざまな実体験、例えば今の季節ならツクシやタケノコを探しに出かけて行って、春の訪れを親子で体感するなんてことも良いかもしれません。

(ご家族で体験を重ねて)お子さまの感性を磨くことは、とても大切だと思います。」

 

 どのように絵を描くかではなくて、どんな絵を描くか。ご家庭では内容の部分を強化するんですね。

 

 

「そうなんですよ。描きたいことが(心の中で)決まっていると、(お子さまは)おのずと手が動いてくるようになってくるんですよ。

 

(先ほどの春の例でいうと)知識でしか春の訪れを知らないようなお子さまは、春の風景を描きましょうと言った時にチューリップをギザギザ線で描くんですよ。しかし親子で春を探しに行ったことのあるお子さまは、チューリップも花びらを(デッサンするように重ねて)描くだろうし、ツクシ、タケノコ、蝶々など自分の見た風景を様々に組み合わせて描けますよね。」

 

ー 自分ができてくるということですか?

 

そうそう、そういう自分を持っているお子さまは、その素質を伸ばしてくれるお教室の先生に出会えるといいと思います。伸ばすとは、(あらかじめ講師が想定した)答えを求めない。与えられた課題に対して、その子が思い描いている内容を引き出してくれることで、そのような先生に就けば、お子さまの目が輝いてくると思います。

      

ただ・・・自分を持っているお子さまは稀なんですよね。絵画に悩んでいらして、(小学校受験の対策として絵画の)個人教室に来られる方の大半は、まだ自分ができていないんです。

 

お子さまも絵を描くことが苦手そう、お教室で授業を受けても手が止まってしまう、ご両親も自信がなくて教えられそうにないという場合には・・・

 

どうしよう?と思った時に、今、何が描けないのか、現状を洗いざらい出していって、(例えば〇が上手に描けないという場合には)〇(マル)から練習していけば良いんです。

 

〇はどうやって描く、次に人間はどうやって描くというのを、一歩一歩進んでいくしかないんですよ。

 

大丈夫です。(年長からでも)手遅れではありませんよ。」

 

 

 

● 持って生まれたものはある!(志望校の絞り方)

 

ー 絵だけ取っても、お子様の現状や資質によって取り組み方が違ってくるのですね。それは、志望校を考えていく上でも、同じですか?

 

持って生まれたものはあると思うんですよ。資質というより、生まれ持った性質ですよね。

 

(入学した後の)勉強のやり方を見ていても、こつこつ毎日努力して力をつけていく子もいるし、どこかで奮起して、自分のやりたい時が来たらビャー(上昇していくジェスチャー)と頑張る子もいます。

 

だから、みんながみんな、御三家といわれるような学校ばかりを狙うのはどうなんだろうと(思います)。

 

お子様に合った、自分らしく居られる場所に入れてあげないと、伸びるものものびない。

知名度や進学実績を基準に志望校を考えるのではなくて、お子さまの個性を重視した時に、マイナス思考に陥らず、夢や希望を持って、来るべき時が来たら自分の将来を自分で選択できる環境に置いてあげることが、いちばん大事な気がします。

 

- 学校の知名度や、ご家庭の希望だけではなく、お子さまの性質を見極めて志望校を決めることが大切なんでしょうね。難しそうです。

 

ただ、本当に、お子さまによるんですよね。無理して入ったけど頑張ってすごい人になった人もいるし、反対の場合もあるし。難しいですよね。(中学、高校、大学に附属している一貫校を志望される場合は)わが子のこの先の10年以上(の人生)を決めるのは、覚悟のいることですよね。

  

お母さま方は、学校説明会に参加した時に、どの部分を見られるのかな? 

 

- 大学への進学実績のような進路についてと、あとは倍率ですか? 私だったら、の場合ですが。

 

(頷きつつ)これは私の場合なんですが、娘の志望校を考えていた時に、ここかなという学校を3校ほどに絞って、学校説明会の他に展覧会も見に行ったんです。それぞれの学校の図画工作の取り組み方、4教科以外の科目をどのようにとらえている学校なのかを、私なりに見て、参考にしたいと思ったんですよ。特に1年生の作品に興味を持っていたんです。学校が1年間の図画工作の成果の代表作品として展示するわけですから、その学校の考え方が見えてくると思ったんですよね。

 

A校は、最初に学校の理念が一番魅力的だと思っていた学校でした。ですが、絵を見てみると、どの子も丁寧に描いているけれども、みんな同じような絵の描きかたをしていました。

 

次のB校は、絵がとても見た目は美しいんですが、使っている色数が決められている課題だったんでしょう。だから、冒険が少なくて、失敗もすごく少なかった気がします。

 

そしてC校。3校の一年生の中でいちばん画面が暗い。ほとんどグレートーン。絵の具って、自由にどんどん重ねていくと暗い色になっていくんですよ。要するに、生徒の自主性を重んじてくれる学校なんだと思いましたね。

 

結局、私が(志望校に)選んだのは、C校でした。

一見色彩がイキイキしていなくとも、大人の手が入らないため絵が上手に見えなくとも、きっと自分で試行錯誤している。だから高学年になるにしたがって作品に個性が見えてきて面白い学校だと思ったんですよね。 

 

- いま、学校を見る目が変わりました。ご家庭に合った学校を見つけるということがわかったような気がします。学校によって価値観が異なることもわかりました。では、実際には何校か出願するのでしょうけど、気持ちとしては一校に絞っておくべきですか?

 

「例えば大学受験で考えたときに、今日は文系の学科を受験、明日は理系、さらに美大も受験します、という風にはしませんよね(笑)

 

ペーパーを重視して指示制作のみを出題する小学校と、行動観察や自由工作を出題する小学校の両方を受験することに関して、私はそれに似た印象を持っています。両方目指すとお子さまもお母さまもパンクしてしまうような気がします。

 

指示制作を出題するペーパー重視の学校のためにペーパーでは全範囲を網羅して、さらに緻密なお話を最後まで聞いて理解する集中力と忍耐力が求められるのに、一方では自由工作で勝ち抜くために作って作って作りまくらなければならないとしたら、無理をさせてしまいますよね。分散してしまう。気持ちもぶれますよね。

なので、わが家の場合は、一校に絞りました。

複数の学校を受験なさる方が多いと思いますが、やはり似た傾向の学校を受験する方がお子さまの負担が少ないとは、思っていますよ。」

 

● 模擬テストに一喜一憂しない

 

- 当たり前かもしれませんが、志望校がどんな出題をするのかによって、対策も変わってくるということですね。対策という意味では、年長クラスになれば志望校別の模擬試験も増えてきます。模試の上手な活用法はありますか?

 

「テストの点数だけ見て、100点だったら褒めるし、低かったら叱る、というのは止めたほうがいいですよね。

 

いろいろなお考えのお母さまがいらっしゃると思いますが、私は娘たちに模試の点数を見せたことはなかったんです。点数を気にしてほしくない、自分が正しいと思うことを行動してほしいと思っていたので。ただ、できなかった時には、お手紙が来ているよ、ここはこうしたほうがいいのよ、という話はしていましたけどね。

 

それに、お子様に数字を見せて『あなた何位で、これじゃ受かる訳ないでしょ』と言ったところで、きっと理解できないですよ。それよりも『受かる訳ないでしょ』というお母さまの言葉だけが心に残ってしまう。

 

受験なのでもちろん頑張るんですけど、小学校受験が中学受験と大きく違うところは、人を押しのけて合格を勝ち取るという意識だけではやっていけないというところです。

 

(小学校受験は)親の受験ともいわれていますが、学力だけではなく躾や人間性、いろいろな面から総合的に判断されます。

 

目の前のお子さまにとってなにが大切なのか。決して順位ではなくて、失敗した部分をどうやって解決していこうかと、テストの結果に一喜一憂しないで、せっかくの刺激を(親子で)いい方向に考えていくきっかけにしてくださいね。」

 

 

実際の授業では、それぞれのお出かけや旅行など写真をご覧になり、お子さまの体験談を聞かれ、思い出を掘り起こすようにして、絵をご指導されているそうです。ありのままの姿を受け入れ、個性の輪郭を際立たせてくださるミサミサ先生に、私も子供の頃に出会って、教えていただきたかったと切実に思いました。

 

お子さまの瞳をキラリと輝かせたいと思っておられるお母さま方、まだ時間的に余裕のある今のこの時期、じっくり絵画に取り組んで見られるのも良いかもしれませんよ。

 

 

 

取材・文/2460194(演出家・2児の親)