ミサミサ先生 緊急インタビュー

10月。いよいよお試験の本番が始まります。今回のインタビューは、残すところあとひと月を切ったこの時期、お子さまと共にこれまでご準備されてきたお母さまへ、ミサミサ先生からのメッセージです。
・信じて、最後で見守ってほしい
― 10月ですね。あっという間に秋になったような気がします。
「早いよね~(笑)。いま小学校(を受験するお子さま)は6歳、5歳。大学(受験)まで12年。干支が一周でしょう? ほんと、一瞬。(子供が)中学校に入ったら、(その後の親の)時間の感覚は(幼稚園、小学校の時より)さらに一瞬ですよ。
自分自身は、平成元年あたりから変わっていないような気がするのに。」
― あっという間にやってきてしまった、もうすぐお試験を迎えるこの時期を、どのように過ごせばよいのでしょうか。
「もう、この時期になったら、お子さまを信じることじゃないかなと思います。
今までがんばってきたんですから、お母さまとしては、ありのままのお子さまを最後まで見守ってあげてほしいと思うんですよ」
― 幼児教室では通常のクラスが終わって、志望校別の直前対策講習が始まっている時期ですね。
「(多くの幼児教室の)直前対策では大切なポイントを抑えるのと同時に、お母さまにはお子様さまの弱いところも見えてきちゃうと思うんですが、チェックすることだけに気をとられてしまってはいけないと思います。
その場でその子にどうしてダメだったのか、どうしたらいいのかを教えてあげないと。
あれはダメ、これはダメ。(ダメなことが)見つかったらダメ。だから目立ったら罰点という考えでこの時期を過ごすのはかわいそう。(直前対策を受講することで)お母さまもお子さまも疲れてしまう時があるんですよ。」
― 直前で失速してしまうということですか。
「優秀な子、いろいろなことが理解できて、現実が見えている子の中には、秋になって減速してしまう子がいるんですよ。見えすぎちゃって、怖くなっちゃうんですよね。
それは、能力がないのではなくて、あるから。失敗するのは怖いし、失敗したら怒られるし、ということを感じてしまって、結果として自己肯定感がだんだんだんだん無くなっていく。
初めはイキイキしていた子が、だんだん目の輝きを無くしてしまう。テストの結果は悪くなくても、疲れきっていて、(その子自身に)頑張ろうという意思がなくなってしまっているんですよね。」
― 怖いですね。
「もちろん、最後まであきらめずにコンコンと言い続けたほうがいい場合もありますよ。例えば、月齢の遅いお子さまなどは、言い続けたほうが良い場合が多いです。
(全員がそうなる訳ではなく)疲れてしまうのは、他の子が診る視点よりも深くものを見る子じゃないかな。
大人から何か言われると、他の子だったら流せるものが流せなくて、どんどん溜まっていってしまって、(期待に応えようと)頑張りすぎた結果、目の輝きがなくなってしまうんでしょうね。
そういう子は、お母さまの顔色をよく見ているから、お母さまが元気じゃなくなったら、子供も元気じゃなくなっちゃいますよ。
だから、もう6歳になっている月齢の早いお子さまは特に、完璧に仕上げようとは思わないでほしいんです。
隙がなく仕上げて送り出したいというお母さまのお気持ちも私にはとても分かりますが、直前のこの時期、ひとりひとりのお子さまの状態を見極めるのはお母さましかいませんから、お子さまをよーく見てあげてほしいと思います。
せっかく私立の小学校を受験しようと思ったのだから、『なんで(うちの子は)出来ないんでしょう?できないんでしょう?』って言っていたら、お子さまの強みまで見逃してしまいますよ。だって、(子供はもともと)できなくて当然なんです。
とにかく、残りの時間を豊かに過ごすことに、お母さま自身が一生懸命に伴走して、(入試まで)走りぬく。
そういう時間を(親子で)過ごせれば、私は良い結果にたどり着くと思いますよ」
・学校と共に、お子さまを育てていく
― よく『小学校受験は親の受験だ』と言われていますが、どのような親が選ばれるのでしょうか?
やはり、経済力をアピールするものなのですか?
「ブランドの時計とか(笑)? そういう世界も無いことはないんでしょうけど、極まれだと思いますよ(笑)
これは本当に、私の主観なので上手く言えないんですが、私立小学校の受験に限って言えば、学校が求めているものは、学力だけじゃないと思うんです。精神性と言えばいいのでしょうか。
(一生のうちで)小学校時代というのは、学力だけではなくて、人間形成においても一番大切な時期でしょう?
人として(児童一人一人を)どういう人間に導いていくのかという各学校の方針が必ずあって、それに対してご両親がお子さまを生まれてから6歳になるまでどのように育ててこられて、小学校に入学した後は、学校と共にどういうお子さまに育っていってほしいのか、その(各家庭の方針を知る)ための入学試験だと思うんです。
少し前までは、ペーパーもあるけれど面接を重視する学校が主流だったというのは、やはり(小学校入試で必要とされるのは)考え方ということ。
偏差値の高い大学に進学させたいから小学校受験をさせたいっていう考え方は、私もすごくわかるのですが、(実際に私立小学校の父兄を経験してみると)それだけを重視されるお父さま、お母さまには、私は違和感を感じることがあるんです。
私学というものは、勉強だけではなくて、心を育てるみたいなところ。勉強させるだけではないところが私学なんだと(思います)。
成績だけを見るのではなく、もっと細かな子供の言動や興味の方向、成績以外の数値にできないところを大切にできるご家庭のお子さまは、成長しても思いやりがあり、余裕があり、学力もある人間に育つ。そのために学校と共にお子さまを育てていくという視点が(ご家庭に)あるのかどうかを、いろいろな面から総合的に見られるのではないでしょうか。
これまでご両親がどう学力を上げてきたかではなく、どう人間的に育ててきたのかを見ていただく。
なので、ありのままのお子さまを連れて行って、その学校に合うのかどうかを判定していただく。」
― 受験というより、人生ですね。
「そうそうそうそう!人生なんですよ。
人生にはいろいろな道があるけれど、親が子供に敷いてあげられる道があるとしたら、教育しかないと。親は自分が生きてきた人生の中で子供にとってどれが最善の方法かを考えるしかなくて、どのお母さまも、お子さまにとってこれが最善の道だと考え抜いて、今までご準備されてきたと思うんです。
私は娘たちの小学校受験を決めたときに『やるだけやってみるか。でも絶対に途中で投げ出さないぞ!』という気持ちで臨みました。だから(今年お試験に臨まれる)お母さまにも自信をもって、最後までブレないで、お子さまを送り出してあげてほしいんです。
環境を用意するという意味でも、いろいろな意味で小学校受験に関して言えば、いちばん大切なものは、やはり小さい頃からのご両親の愛情なんですよね。
お母さま、自信を持って、(入試本番に)臨んできてくださいね!」
取材・文/2460194(演出家・2児の親)